【特別編:編集者が語る―Louisa's Books #4】オルコット4姉妹の半生を執筆『No.1感動 きずなの伝記物語』:作家、萩原弓佳さん

ルイザ・メイ・オルコットに関する書籍が出来上がるまでの裏話や本についての魅力をお伝えする【編集者が語る―Louisa’s Books】。

今回は「特別編」として、昨年末に出版された『No.1感動 きずなの伝記物語』(日本文芸社)でメインストーリーを執筆した作家・萩原弓佳さんがこのコーナー登場です!

オルコット4姉妹が取り上げられた理由やルイザに感じる魅力、執筆で工夫された点などを教えてくださいました。

オルコット四姉妹の伝記を執筆するきっかけ

私は、2025年12月に発売された児童向けの伝記読み物『No.1 感動 きずなの伝記物語』(日本文芸社)のメインストーリーの執筆を担当しました。

本書は、歴史に名を残した「偉人たちのきずな」をテーマにした伝記です。親子、姉妹、同志、友情、種をこえたきずななど、それぞれの「きずなの物語」が展開します。『若草物語』を書いたルイザ・メイ・オルコットとその姉妹のほかにも、ナイチンゲールやエリザベス・ブラックウェル、マリー・キュリー夫人と娘たちなどの人生も、「きずな」を通して読むことができ、新しい感動や発見に出会える本となっています。 

前作『No.1 感動お姫様の伝記物語』でも多くの偉人を取り上げました。その際、偉人どうしの関係性や人間味あふれる家族の物語などが、まだまだうもれていることを知った編集部の方々が、今回「きずな」というポイントに注目した伝記を、私にご依頼くださったのです。

この本をつくるにあたり、古今東西の偉人の中から誰を題材とするかを検討したのですが、その際、オルコット姉妹については満場一致ですぐに採用が決まりました。

『若草物語』は有名な作品ですが、その作者であるルイザ・メイ・オルコット自身が四姉妹の一人であったことまで知っている子どもは、決して多くないでしょう。
物語の中に描かれた印象的な出来事の数々に、実在のモデルがいたという事実は、それだけで強い魅力を持っています。その点を、ぜひ読者に伝えたいと考えました。

提供写真:オルコット4姉妹を取り上げた伝記の1場面

『若草物語』を読んだことのない子もある子も楽しめる物語を目指して

執筆にあたって特に意識したのは、『若草物語』を読んだことのない子と、すでに読んだことのある子の双方に、楽しんでもらうにはどうすればよいか、という点でした。未読の読者には「若草物語を読んでみたい」と感じてもらいたい一方で、『若草物語』の内容を説明するだけでは、既読の読者にとって退屈なお話になってしまいます。

そこでどちらの子にもなじみの薄いであろう四女メイの娘、ルルを主人公としてストーリーを展開することにしました。

ルルが母たち姉妹のこと、伯母のルイザが書く母たち姉妹をモデルとした物語のこと、を少しずつ知っていく、という流れです。

ルルや長女アンナの息子たちを登場させることで「実在して過去から未来へ続いていく物語」という面を強調したいという思いもありました。

制作の過程では、思いがけず自分の感覚の鈍りに気づかされることもありました。

出来上がったゲラを確認していたとき、横からのぞいた大学生の娘が「それは書いてはいけない」と指摘してきた部分がありました。

登場人物の結婚相手についての記述でしたが、言われて見ると未読の人は「誰と誰が結婚したか」は知らない方が良いでしょう。

私を含めこの本の関係者はすでに大人になって久しく、物語の展開に対する感性が鈍っていたのかもしれません。一方で、娘は子どもの頃に読んだときの驚きや感情を、今も鮮明に覚えていたのでしょう。

小さな読書家だった娘に、思わぬ形で助けられることになりました。

提供写真:マンガも入っていて読みやすくなっています

執筆する中で感じた作家としてのルイザ・メイ・オルコットの魅力

今回の執筆にあたり、多くの関連資料に目を通しました。

どれも興味深いものでしたが、その中でも特に心を打たれたのが、その中でも、心をうたれたのがルイザ自身の日記を翻訳した本です。

仕事のための資料であることを忘れ、夢中になって読みました。

日々の苦労や迷いを率直に書き留めながら、少しずつ自分の物語で原稿料を得ていく過程が描かれています。

私なら作家としての成功に浮かれてしまいそうなところですが、ルイザは作家として収入を得た後も、女優や看護師といった別の生き方も真剣に考え続けていました。

その姿からは、「大作家」になる以前の、一人の若い女性としての迷いや不安が伝わってきます。同時に、将来に対して大きな夢や希望を抱き、何度でも挑戦しようとする強い生命力も感じられました。

貧しさゆえに働き続けなければならなかったという背景はあるにせよ、生命力、行動力のあふれるルイザには憧れと、深い尊敬の念を抱かずにはいられません。

また、日記の随所に見られる家族への思いの深さも印象的でした。

常に家族のことを考え、支えようとするその姿勢こそが、『若草物語』をはじめとする温かな物語を生み出した土台なのでしょう。

本書の執筆は、物語を書くこと、そして人を描くことの魅力をあらためて考えさせてくれる、非常に貴重な経験となりました。

今を生きる多くの子どもたちに、オルコット四姉妹の魅力を伝えるお手伝いが、少しでもできたとしたら、この上なく光栄なことと思います。

【今回ご紹介いただいた本】

『No.1感動 きずなの伝記物語』(女の子の伝記物語研究会 編)

出版社:日本文芸社

提供写真:『No.1感動 きずなの伝記物語』

【作家】

萩原弓佳さん:大阪府出身。2016年、『せなかのともだち』(PHP研究所)でデビュー。同作で第28回ひろすけ童話賞受賞。他に『食虫植物ジャングル』(文研出版)、『逃げた王子と14人の捜索隊』(新星出版)などがある。

伝記物語は『No.1感動 きずなの伝記物語』と『No.1感動 お姫様の伝記物語』の2冊を執筆。日本児童文芸家協会会員。

(若草物語クラブから質問)『若草物語』で一番好きな登場人物は?
ダンです。荒っぽく見えて実は繊細で、クールで思いやりにあふれ、次から次へと災難に襲い掛かられる。物語が違えば主人公になってもおかしくないポテンシャルの持ち主ではないでしょうか。

暖かい陽だまりの中にいるかのような登場人物ばかりの中で、ひとり影を背負って懸命にもがき、苦しみ、それでも前へ進もうとしています。ダンは将来絶対幸せになって欲しい、と心から願わずにはいられません。

※ダンは『若草物語』続編の『第3若草物語:原題Little Men』、『第4若草物語:原題Jo's Boys』で活躍します。

【若草物語クラブ事務局から】

世界で最も有名な4姉妹と言っても過言ではない『若草物語』のジョーらマーチ家の4人の少女たち。でも、萩原さんが伝記として取り上げた理由としてご説明してくださったように、実在のモデルがいて、それが作家ルイザ自身と姉妹、家族のことである、ということまで知っている読者はそれほど多くはないかもしれません。

本作は、4姉妹の末っ子メイの忘れ形見ルルが聞き手となった物語展開となっていることで、名作『若草物語』誕生までの道のりや、姉妹の強いきずながとてもわかりやすく、ルイザとこんなやり取りがあったのかも、と思わず想像してしまうお話となっています。常に自分らしく、困難や夢に真剣に向き合った、オルコット4姉妹の人生の証が不朽の名作誕生へとつながったことを、あらためて広く皆さまに知っていただく機会になれば…。子どもたちだけでなく、大人の方も、もう一度『若草物語』のお気に入りの場面や、忘れられないフレーズに出会いたくなる、そんな伝記です。

Follow us!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です