【編集者が語るーLouisa's Books #2】大人が大切に持っていたい『若草物語1&2』:担当編集者、日下部由佳さん
【編集者が語るーLouisa’s Books】では、ルイザ・メイ・オルコットに関する書籍を企画した担当編集者が、本が出来上がるまでの裏話や本についての魅力をお教えします。
今回語ってくださったのは、『若草物語』ファン向けの愛蔵書の決定版ともいえる、『若草物語1&2』を手掛けた講談社編集者の日下部由佳さんです。
■続編を読んでいない『若草物語』好きな人にも楽しんでもらおう、訳者のアイデアから誕生
谷口由美子先生のアイデアで正編、続編をまとめて1冊にしたのが、『若草物語1&2』です。
「映画なんかでは続編までやるので、続編の部分は≪映画のオリジナル≫と思う人が多いのよね。『若草物語』が好きという人でも、続編を読んでいる人は少ないので、いっしょに楽しめる本があったらいいわよねぇ。いいアイデアでしょう?」と、谷口先生がお話されていたのをよく覚えております。
たしかに、どんな本でも、1巻よりも2巻が売れるということはないので、2巻まで読んでもらおうと思ったら、一緒にしてしまうのがよいのですよね!
谷口先生とは以前、青い鳥文庫の「若草物語」(全4巻)を作らせていただき、その際に、「この訳は、一般向けとしても遜色がないけれど、児童文庫という本の体裁と挿絵で子ども向け、と思われてしまうのが残念だな」と思っていました。
■「大好きな物語を美しい装丁で」。編集者の夢がかなった1冊は現在なんと「6刷」に
翻訳は、少しの改訂はありますけれど、谷口先生のお仕事そのままです。今をときめく北澤平祐さんの装画と大好きな中嶋香織さんの素晴らしいデザインで、大人の方が大切に持っているのにふさわしい1冊になったのではないでしょうか。
今はなかなかここまで凝った装丁の本は作れません。タイトルは黒の箔押し、見返しの紙の質感や美しい花模様、別丁の扉などなど、見るたびに好きだなあと思います。実用性もあって、カバーをはずした表紙にはマットPPをかけているので、丈夫になっています。また、中嶋香織さんの文字組のデザインはすばらしく、とても読みやすい本文になっています。
分厚い本で1900円もするため、どのくらい売れるかしらと思っておりましたが、現在、なんと6刷に。子どもの頃からの大好きな物語を美しい装丁で持っていたい ―― という自分の夢がかなった1冊でもあります。
そして、みなさま、巻末には、なんと、オーチャード・ハウスミュージアムのジャン館長のメッセージも!若草物語クラブの方必携の1冊です(笑)
【今回ご紹介いただいた本】
『若草物語1&2』(作:L・M・オルコット 訳:谷口由美子)
装丁:イラストレーター・北澤平祐&装丁家・中嶋香織、出版社: 講談社
【担当編集者】
日下部由佳さん:講談社 編集者
(若草物語クラブから日下部さんへ質問)『若草物語』で一番好きな登場人物は?
ローリーのおじいさま
『Little Women』の原題名が表紙で活かされているこの本が、日下部さんの『若草物語』デビュー本だそうです。お母さまの本棚にあった本で、中学生の頃に手に取られたとか。しっかり読み込まれて愛された1冊という雰囲気が伝わってきます。
【若草物語クラブ事務局から】
若草物語クラブの特別顧問を務める谷口由美子さんが訳した『若草物語1&2』。本国アメリカをはじめ、"Little women"といえば、1868年のPart1と翌69年のPart2を併せたものを指すため、事務局メンバーには必携の1冊です。ご紹介にあったように、若草物語クラブ名誉会長を務めるルイザ・メイ・オルコットのオーチャード・ハウスミュージアム、ジャン・ターンクイスト館長からのメッセージも付いています。『若草物語1&2』初版本(2019年12月)を持つ身として、現在6刷と伺い、こんなに『若草物語』の愛蔵書を求めている方がいらっしゃるのだなあと嬉しくなりました。
日下部さんのおっしゃる通り、『若草物語』は全4シリーズ。『若草物語3&4』の出版も待ち焦がれています!