【編集者が語るーLouisa's Books #1】現代が忘れた"大切"なものを気づかせてくれる『名作 クリスマス童話集』:担当編集者、米本円香さん

【編集者が語るーLouisa’s Books】では、ルイザ・メイ・オルコットに関する書籍を企画した担当編集者が、本が出来上がるまでの裏話や本についての魅力をお教えします。

今回著書について語ってくださったのは、2024年11月に第2弾が発売になったばかりのルイザ・メイ・オルコット日本初邦訳短編を収録した『名作 クリスマス童話集』シリーズを手掛けた、いのちのことば社編集者、米本円香さんです。

■コロナ禍の状況と重なったルイザの「ケイトのクリスマス」の家族の姿

小学生のころ、クリスマスプレゼントにもらった『アンデルセン童話 愛蔵版』(福音館書店)が家にありました。赤い表紙に金の箔押しが施された、とても美しい本で、姉妹そろって夢中になって読んだことを思い出します。

クリスマスに本を贈る・もらうという経験をされた方も多いのではないでしょうか?

2023年に出版した『名作 クリスマス童話集』(小松原宏子・文)には、クリスマスの定番「クリスマス・キャロル」から「くるみわり人形」「幸せの王子」、隠れた名作「靴屋のマルチン」など、冬に読みたくなる名作童話を収録しました。本書の目玉は、『若草物語』の作者ルイザ・メイ・オルコットによるクリスマス短編「ケイトのクリスマス」。

両親を失った少女・ケイトが、親せきを頼りイギリスからアメリカに行くところから物語は始まります。自分には「おばあさま」がいることを知ったケイトは、その存在に胸を躍らせつつ、家族と離れて暮らす祖母のもとを訪ねていきます。そして、二人が過ごすクリスマスに起こった「奇跡」とは……。

この「ケイトのクリスマス」を企画・編集していたのはコロナ禍で、クリスマスも皆でまだ集まることができない時期でした。家族が集まれないというその状況と、物理的に遠くてなかなか会えない「おばあさま」とその家族の状況は、どこか重なるものがありました。そのこともあり、最後のシーンは胸にせまるものがあります。クリスマスの喜びが詰まったクライマックスは、ぜひ本でお読みください。

写真:『名作  クリスマス童話集』シリーズ2冊

「受けるよりも与えるほうが幸いである」オルコット家のレガシー伝わる短編

そして、今年出版した第二弾『名作クリスマス童話集 かけがえのない贈りもの~Gift~』には、「フランダースの犬」「賢者の贈りもの」をはじめ、5篇の童話が収録されています。

前作に引き続き、オルコットのクリスマス短編から「バーティのクリスマス・ボックス」を入れました。小さな男の子バーティの家に、貧しい家庭の母親からクリスマスに食べるものがないから助けてほしい、という手紙が届きます。貧しい家庭の子たちが喜んでクリスマスを迎えられるようにと、バーティは大きな箱にせっせとお気に入りのものを詰めていきます

「受けるよりも与えるほうが幸いである」 オルコット家が大切にしてきたレガシーを、

この短編でも感じます。「自分さえよければ」という風潮が強まる現代が忘れてしまった「大切なこと」を、オルコット作品は気づかせてくれるように思います。

名作童話を収録したこの二冊の本が、このクリスマスの時期、「だれかのために」を考えるきっかけとなり、素敵な「贈りもの(Gift)」となりますように。

【今回ご紹介いただいた本】

『名作 クリスマス童話集』(2023年)

『名作 クリスマス童話集 かけがえのない贈りもの 〜Gift〜』(2024年)

いずれも、小松原宏子:文 矢島あづさ:絵、出版社: いのちのことば社

【担当編集者】

米本円香さん:いのちのことば社出版部書籍編集課 編集者

(若草物語クラブから米本さんへ質問)『若草物語』で一番好きな登場人物は?

三女ベスです。引っ込み思案でおとなしく病弱だけれども、ほんとうの優しさと強さをもつ女性として、とっても好きな人物です。

【若草物語クラブ事務局から】

今まで日本で紹介されていなかったルイザのクリスマス短編が、若草物語クラブ副会長(兼特別顧問)の小松原宏子さんの訳で楽しむことができるおすすめの本です。毎年クリスマスの朝にプレゼントで届く、ちょっと特別な本が楽しみだった、という米本さんと共通の想い出話に親しみを感じました。大切な人へ本を贈る、そんなクリスマスがこれからも受け継がれていくことを願わずにいられません。

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